勘定を払ってしまってから、そそくさと店を出た。 ドアをくぐった瞬間、湿った梅雨の外気がモワッと全身に襲いかかって、思わず息詰まった。 終日、小雨が降ったり止んだりの繰り返しだったが、宵時には上がっていた。 酷い湿気だ。辟易するも、見上げた夜空…
「ねえ、キキ。私のお付き合いしてるのはね、お医者なの。二十も上だけど、私、あの人のこと、とっても好きよ」 「英語もフランス語もドイツ語も堪能で、ロシア語だって少しばかり話せるの。彼ね、何でもくれるのよ。会うたんびに素敵な首飾りだったり、傘だ…
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