書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

2020-01-28から1日間の記事一覧

おでんの気持ち(全二話)

(どんどん埋没している。最後は、きっと、墓穴だ) 書いて消し、消しては書いたが、いっこうに進まぬ。ノートはただ、黒ずんでゆくだけである。三時間が経過した。 (梶井は三十一で夭折した。芥川も、太宰も、三十代でサヨナラだった) 通りを眺めた。 (-俺は…

宵闇ゆく(一話読み切り)

あんまり耳が膨張するものだから、閉ざしてしまいたい。何も、誰の声も聴きたくない。何も、知りたくなんかなかった。 街は弛緩している。花芽の匂いが、しどけなく土の温気に溶けていた。それはサイレンの歌声に似て、通行人達を惑わせている。呑気なのだ。…