書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

「色眼鏡」第12話(全13話)

    売り上げが伸びぬことに露骨な不満を浮かべて、帳簿ばかりを見ていた。イライラしている。眉根をひそめ、口角を歪めている。

 

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   貧乏ゆすりしたりするので、とっつきの悪さに桔梗はビクついて、アイスクリームを受け取ったが120円と安かった。

 

   「ときに、お客さん。あのおじいちゃんとは知り合いかい」

桔梗はアイスクリームにかぶりついた。

   「いえ」

馬鹿みたいに腹が減っているのだ。アイスクリーム屋は続けた。

   「あのね、あのおじいちゃんの言うことを聞いちゃいけないよ。あの人はね、いちど捕まったんだ。とんだ助平を働いたのさ。教授ときいて呆れるよ、お縄になったっていうのに、懲りずに次の助平を狙ってるんだから」

桔梗はかぶりつく口を一度止めた。

 

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   「…助平を働いた...?」

すると、アイスクリーム屋は待ってましたと言わんばかりの笑顔を浮かべた。

 

   「あのおじいちゃん、いたずらなんぞを働いたんだよ。6歳だか7歳の女の子にね。呆れたモンだよ、相手は自分の孫ほどの年じゃないか。で、通報されて、老教授さんは一転、性犯罪者に身を落として、大学なんて、もうとっくの昔にクビさ」

彼は鼻を鳴らして笑った。

  「ーなのにじいさん、どういうつもりか舞い戻ってきたんだ。この公園、そこのベンチにね。もっぱら次のいたずらの相手を物色してるっていう噂さ。お客さん思わないかい、よくもまあ、ああもしゃあしゃあと……」

桔梗はアイスのコーンの部分に達していた。ー噛みごこち硬くバリバリしている。食べにくい上に、ひどく不味い。

 

  この男の話は腹立たしかった。噂する人間独特の、下卑た口調が不快なのだ。知りもしない人のしくじりに、暗く熱中して話し続けている。桔梗はバリバリを咀嚼して、ゴクリと飲み込んだ。

 

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   ー自分の会話に、客がまったく興味がないと見てとると、このアイスクリーム屋は途端口をつぐんで、仏頂面になった。貧乏ゆすり。わざとらしく手元の時計を見たりして、邪魔だと言わんばかり手を払う。

    彼は閉店準備に取り掛かった。

 

(最終話へつづく)