書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

MONDAY(全6話)

第二話

 

 

 今日の彼女は大変平和である。レースカーテンの、あの揺らぎのように。 

 

 タカは泥酔の自分を迎えに来たし、介抱もした。ミアは彼の愛情を確認出来たから満足である。最初からそうすれば良かった、まどろみながら思う。

(アルバイトをクビになったことくらい、へっちゃらだわよ)

恋人の愛情に包まれた自分、守られている自分。つまり、幸福の宿命を生きているのだ。自然、笑顔がこぼれる。

 

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 台所へ行き、また冷蔵庫を開け、またジュースを喉に流した。ミアはタカの帰りが遅いことに不満を覚えた。コンビニへ行ったにしては、時間がかかりすぎだった。菓子パンが冷蔵庫にあったので、躊躇なく封切った。何も考えず、咀嚼した。

 ―テーブルに、置き手紙があった。

  ミアは菓子パン片手にそれを読んだ。タカの筆跡である。

 

 荷物を全部まとめて、出て行ってくれ。鍵はかけなくていい。

 もう、来ないでほしい。

 金輪際、二度と。     

                                 孝

 

       

 

 例の店長と同じ文言が、幾つか散っていた。

 二人の共通語に、異様な嫉妬を憶えた。ミアは身体震わせた、手紙を散り散りに破った、或る、根拠のない疑念が、彼女には強烈な確信となった。

(つまり、返信が無かったのは、店長と浮気してたからってことじゃない…!)

 

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 奇妙なエネルギーが彼女にぐんと近づく。彼女はそれを孕んだ。部屋中のものを壊し、汚し、タカを困らせれば、それで良いはずだった、そうすれば、心配してまた駆けつけてくれる、どこかで期待して、けれど怒りの感情は嵐となって吹きすさんだ。

 

 憤怒にまみれたミアは、恋人だった男の部屋から、勢い任せに出て行った。

                                  

                                つづく