書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

THE ゲリラバンド・置物人間 結成前夜

バンドメンバー紹介

 

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○vol/タンバリン...奏 小夜子…家出娘。家出先で辿り着いた高円寺の街で、マイクを握ることになる。

○Bs.竹内 友尊…元大学ラグビー部員。筋肉バカ。周囲からはラガーの愛称で呼ばれている。

○Gtr.成部 リキ…「置物人間」のバンドリーダーでゲイ。高坂すばるに恋心を寄せている。

 

◎作詞担当   高坂すばる...高坂書店店主。小説家志望。成部の同窓生。

◎作曲担当/ステージにおける置物人間 土砂川双鉄…成部とすばるの恩師。書道師範。

 

その他の主要な人物

⦿向井三千雄…カフェNo.33の店主。元ジャンキーの平和主義者。

⦿向井湘子…三千雄のパートナー。驚くべき馬力の持ち主。

 

 

#結成前夜ーすばるの覚書

あのしちめんどくさい母親も、年を取ったと思えば許せなくはない。

正月に、久々帰省してみりゃ延々と小言ばかりだが、あれはあれで母さんとして、

俺は健気に許すしかないのかもしれないが。

 

―店は安泰だし、何も心配しなくていい。

そう告げて、俺は薄く笑ったんだ。

 

帰り際に、母さんは俺の手に一万円札をねじこんだ。ねじこむなと言うのにねじこんだ。

すると俺は健気なもので、また、不孝なもので、たまの贅沢、とつぶやく。

 

自ら呪って、自ら金持ち気分。迷わずタクシーに乗り込む。何をしたって、高坂書店は変わらずあの場にある。俺はどこにもいけない。

儲かりもしない。何者にもなれない。

すべてが、じっと暗がりから、黙り込んでこっちを見てるんだ。俺はそれが怖かった。

だから臆病風吹かせて、まったく動けず、まったく、まったくの置物だった。

 

―でもあの晩に、あの母さんの一万円札で乗り込んだタクシーのせいで、俺はタクシーよりも

猛烈な何かに背を押され、つんのめって、まえつのめりのまま、全力で走ることになる。全部が、あの時点で既に、始まっていたんだ。

                    (…すばるの覚書は、ここで終わっている)

                               

 

                                     つづく