MONDAY(全6話)
第四話
おい!やめないか!」
つなぎ服の男が、バタバタと駆け寄って来た。「壊れちまう!」
喉が乾いて、なのに十円玉五円玉である。購入ボタンをしつこく押すも、自販機は一切黙り込んで、それはタカの沈黙に似ている。段々に、自販機がタカの姿に見えて来た。ミアは彼のボタンを連打し、しまいには横腹を蹴飛ばしたりして、何とか喉を潤わせようと必死になった。
そこへ、この男が走り寄って来た、というわけである。―男は工具箱を提げている。
その場からどくよう身振すると、彼は慣れた手付きで自販機の表を開けた。見慣れぬ工具を次々箱から取り出し、裏側をガチャガチャやりだした。
何の予定も無いので、ちょっとは眺めてやろうという気になった。ミアは腕組したまま、男の作業を隣で見る。男がしゃがむと、出腹が余計に目立った。首に巻いたタオルで汗を拭い拭い、どうも真剣である。
自販機修理工の男は、まだまだスパナだのペンチだの、取っ替え引っ替え忙しい。単調な作業が、忙しい。
ミアは大きな欠伸を漏らした。本来なら、今頃はあのレースカーテンの窓辺で、タカのベッドで、午睡する時間だった。ミアは欠伸を続けながら、何となく辺りを見回した。
通行する人は減り、彼女の嫌いな、四月のスーツ姿も途絶えている。
と、ミアの視線は男が乗って来た軽トラックを捉えた。―会心の笑みを浮かべた。
「―ねえ、」
彼女は甘く声を絞ると、男の肩を叩いた。軽トラを指差してみせる。
「乗せていってくれない?高円寺まで」
つづく