書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

THE ゲリラバンド置物人間 Track#1-3

Track1−3 知ったかぶり人生難

 

’’知性!品性!貧困知!貧困品格、我らの有閑、人生難!’’

 

前回までのあらすじ)

 

カフェ・No.33の店主三千雄、そしてそのガールフレンドの湘子より「暇儲け」の誘いを受け、拒めど結局付き合わされる羽目になった高坂すばる。夏の夜の環七通りを、三千雄達は熱心に調査する。道中、バンドメンバーでベーシストの竹内友尊こと、ラガーにすばるは遭遇するが…

 

                  *

 

 ラガーはベースケースを背に背負って、短パンから伸びる脚は太く、相変わらず毛深さにおいて右に出る者がない。一度、蚊が毛にひっかかって、刺すこともできず、絡まれたまま身動きできなくなる事件があった。

 

 すばるとラガーは、自販機で各々缶コーヒーを買った。のんびり夜風に吹かれた。

その間も湘子は彼女のいう暇儲けに余念がない。次々に釣り銭出口を探り当て、今日は不作だと嘆きながらも、今の所すでに八百円を彼女は稼いでしまっていた。

 

 

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ラガーとすばるの世間話は続いた。

「ライブハウスの前を、どうみても高円寺女子らしくない、品のいい子がほっつき歩いていてよう」

ラガーの口ぶりはまるで回想するのがこの上ない甘い幸せのようで、すばるはすぐ、こいつは俺と同じ女を見かけたんだ、そう察し、聞き耳を立てた。

 

「その子のスカートがよう、これまた上品柄で」

ラガーは缶コーヒー片手、遠い目をして言うのであった。

「…しかも、すげえいい匂いがしたんだ」

「背丈、かなり高くなかったか?」

すばるはヤキモキしつつも、好奇心に駆られるまま、訊いた。

「そんで、陶器みたいな肌で、瓜実顔で、髪の毛サラッサラで、泣きぼくろがあって」

呆れるほど言葉がついて出て来る。

「赤いショルダーバッグを、斜めがけしてなかったか?」

すばるは友尊の顔を、じっ、と見て、全力で返事を待った。一方のラガーはポカンとして、

「なんで、お前が知ってるんだよ」

つぶやき、

「お前、知り合いか?」

と継ぐ。終いに、

「紹介してくれ!」

単刀直入、猛然と肩を掴んで迫ってきた。すばるはポカンとしたまま、元ラグビー部のラガーに猛然両肩を揺すられると、細身の全身の骨が砕けそうで、危機を感じた。そして、相手もすばると同様、全力で彼の返事を待っているのである。…

 

                        

                                 (つづく)