書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

2020-02-01から1ヶ月間の記事一覧

MONDAY(全6話)

最終話 「おい、」 ―声がした。 声は太かった。ぐっ、と肩を掴む者がある。身体を前後に揺すられる。ミアは薄く目覚め、ゆっくり、鈍く、瞳を開けた。―辺りは闇に塗れ、どうやら日は沈んだらしい。 「おい、起きろ」 声の主は繰り返す。修理工だ。野太く響か…

MONDAY(全6話)

第五話 「…とまあ、そんなわけよ」 「へえ、そりゃ大変だな」 修理工はうなずいてみせた。うなずくと、禿げかかっている頭頂部が露骨である。後部座席のミアも、同意を取れたとみて、深々うなずく。 「まったくよね」 「いや、あんたじゃない。その男の方が…

MONDAY(全6話)

第四話 おい!やめないか!」 つなぎ服の男が、バタバタと駆け寄って来た。「壊れちまう!」 喉が乾いて、なのに十円玉五円玉である。購入ボタンをしつこく押すも、自販機は一切黙り込んで、それはタカの沈黙に似ている。段々に、自販機がタカの姿に見えて来…

MONDAY(全6話)

第三話 馬鹿馬鹿しいほど晴れている。 四月の空は少しの窮屈に耐えつつ、晴れていた。大荷物抱えたミアの前を、まだあどけないスーツ姿達が、不慣れな様子で、先輩スーツの後に続き、通った。三、四人は通った。いや、もっと通ったかもしれない。 もとより就…

MONDAY(全6話)

第二話 今日の彼女は大変平和である。レースカーテンの、あの揺らぎのように。 タカは泥酔の自分を迎えに来たし、介抱もした。ミアは彼の愛情を確認出来たから満足である。最初からそうすれば良かった、まどろみながら思う。 (アルバイトをクビになったこと…

MONDAY(全6話)

第一話 眠りから醒め、けれど彼女はしばらく、ベッドの温もりに包まれ呑気である。四月の空気は緩慢だった、レースのカーテンが窓に揺れている。 カーテンはミアが選んだものだった。彼女の恋人は嫌がったが、ミアはお構いなしに購入した。そして今、そのカ…

きっと、世界中探しても、居場所は無かった。何故なら、世界は眼であり、視線である。そこらじゅう、眼という眼が飛び交って、何処までも付け回してくるのだから。 優月はかつて、「花園の住人」である自分自身が、一等、自慢だった。ランウェイを進む彼女は…