書生のびのお店番日誌

書生のびによる、人生行路観察記

「あなたは最高」第4話(全20話)

  眠い頭で、ボヤボヤ書棚を整理した。

 

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  ガラガラだ。夕方過ぎるまで、来店者数はまず伸びまい。予報では猛暑日、10分の外出ですら辟易としてしまう強烈な太陽光が、舗道を叩きつけているのだ。

 


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  品出しも検品も終えてしまった桔梗は、だいぶ手持ち無沙汰だ。ひとつ欠伸した。

  連日の猛暑に、身体がこたえたか、ボヤボヤ頭がそのうち船を漕ぎだしそうだった。

  ー居眠りしろと言わんばかりじゃないか。ああ、閑古鳥。
   例のブタの貯金箱が視界の隅に入って、頭をぶんと振る。ボンヤリを見られた暁には...。給料日前、貧乏人にさらなる500円の出費は、大の痛手というものだ。

 

 

   キムはいちばんの古株アルバイトである。同時にリーダーでもあるが、早番の桔梗と丸一日を共にすることは珍しい。

   彼女はこのアルバイト仲間が、大の苦手である。

   体躯の大柄なキムは短気の性分だ。腹立ちをしまうことがなく、しまったらしまったで、その分しっかと顔に出る。カチンと来ればため息をつく。舌を鳴らす。
   憤慨を露わに、かくかくしかじかだからこうこうこうよ、と語気鋭く迫ってくるので、どうにも怯えの神経には堪えるのである。
   こちらは緊張するから、終日、石像にでもなったような状態で働く羽目になるのだ。

 

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  キムが、恋人と破局寸前であることは、周知の事実となっていた。ちょっと前の夜、浮気現場を、気の毒にも目撃してしまったという。

 

(第5話へつづく)